取り組んでいくのかという科学哲学的立脚点を獲得することと、
看護学の知の集積に基づく概念的思考力と理論生成・構築力の習得を目的とした科目です。
今日の看護科学論は概念分析手法についてでしたが、私はRodgersを担当しました。
Walker & Avent, Chin & Kramerなど日本語訳されている本もあるなか、残念ながらRodgersのConcept Development in Nursingはまだ翻訳出版されていません…。
ということで少し整理してみました。
Rodgersは今日本の看護界で概念分析の話をするときに必ず上がってくる、革新的手法(Evolutionary View)を提唱した研究者です。
「概念分析は実証主義の(positicvistic)もしくは還元主義(reductionistic)の視点にある困難を乗り越えることであり、現実におけるダイナミズム(dynamism)と相互作用(interrelation)を見極めるために現代の関心事(contemporary concerns)に取り組むことである。」
Rodgersは概念をたえず変化する対象(as continually subject)として、また意味(significance)、使用(use)、活用(application)を通して発展するものとして、優れた哲学者(Price,1953;Rorty,1979;Toulmin,1972;Wittgenstein,1953/1968)の視点を統合した。
<Toulmin>
論証は特定の結論を導いたり、主張を強化するものである。Toulmin Logicとして6つの論証の要素を挙げており、主張(claim)、根拠(data)、論拠(warrant)、例外(reservation)、限定(qualifier)、裏付け(backing)から成る。
<Wittgenstein>
論理哲学論考、言語ゲームなどを提唱。言葉が単一の本質を持たないことや一元的な理論による記述やそれによって明かされるような本質はないと主張している。
概念開発のサイクルにおける要素
Significance
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問題解決を後押しする概念の能力、現象を的確に形作る能力
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Use
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概念を用いる際の方法
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Application
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実際に使用してみた事例。Applicationを通して概念が洗練・発展
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概念開発サイクル(cycle of concept development)
Rodgersが唱えた概念分析で強調する点(p47)
・ 概念分析のプロセスは直線的でなく、次のステップよりもむしろ重複した段階の連続に内包される。
・ 概念分析を行う一つの基本的な(fundamental)目的が関心のある概念を明確化させる。
・ 概念は変化が起こり得る状態ととらえる(以下により詳細な説明)。モデルケースを日々提供する結果として明確化の度合いが述べられる。
変化が起こり得る状態とは(P77-)
分析の目的はあることの核心的(critical)な属性(象徴)(attributes)または「本質(essence)」を含む言葉に関心をもつ概念を定義することである。
「本質」=概念の領域や境界を説明するのに必要十分(necessary and
sufficient)なこと
現在の傾向は概念を動じないもの(static)としてよりもむしろ、動的な(dynamic)ものとして考えるようになっている。すなわち、有限(finite)、絶対的(absolute)、「きわめてはっきりしている(crystal clear)」というよりも「不明瞭(fuzzy)」である。言い換えれば、すべてに共通する(universal)というよりも文脈によるものであり、本来備わった(inherent)「事実(truth)」よりもむしろ実際的な使用や目的によるものである。
概念分析の方法(p83)
・ 概念開発サイクルにおいて概念分析の方法は特に重要な役割を持つ。
・ 概念分析は「use」の段階に焦点を当てている。
・ 概念分析は概念やその現在の使用の明確化に向かわせる。
・ 実際の概念分析の手続きはWilson(1963)やWalker &
Avant(1983,1988)、Chin & Jacobs(1983)といった哲学的アプローチと矛盾しない。
・ 概念分析の異なるアプロ―チは、どの分析過程にも共通して存在する概念の本質(nature)や特徴(characteristic)をもとに、共通した特徴をまさに(simply)共有しようとする(share common features)ことである。(ほとんどのWilsonianはこれをしてこなかった)
・ 哲学的基盤に基づいたアプローチも他の方法と比べて繊細(subtle)である。方法は何人かの研究者が示したプロセスのような、研究者が概念のアイディアを自身であらかじめ決めたものではなく、厳格な分析と帰納的な探究によって行われている。
方法論についてはまた次回ふれたいと思います。
方法論についてはまた次回ふれたいと思います。
文献
Rodgers BL &
Knafl KA: Concept Development in Nursing, 2nd edition, SAUNDERS,2013